私の幼馴染みのＡ子（仮名）はスッゴク良い奴なのですが、ビジュアルに若干難（なん）があるため、30歳になるまで彼氏が出来たことがありませんでした。
Ａ子に幸せになってもらいたいと思い、仲間は大学に入学をすれば大学で知り合った者と、就職をすれば会社で知り合った者と合コンをセッティングをしたのですが、いつも決まって売れ残るのがＡ子でした。
幼馴染みだと長年一緒に居るため、難があるビジュアルに慣れてしまっているのか、それとも外見で人を判断してはいけないと思っているのかは分かりませんが、合コンの参加者にＡ子の印象を聞いてみると大多数の意見は、「特別悪いわけではないのだけど、お付き合いをする気にはなれない」。
私達仲間がＡ子のために合コンをセッティングする際に考えるのが、ビジュアルを気にせず彼女の内面を評価してくれるかどうか、私達としてはＡ子を悲しませたくない思いからしていたことなのですが、傍からするとビジュアルに難があることを前提としているのは、Ａ子にも合コン参加者にも失礼なこと。
私達は気付かぬうちにＡ子のことを可哀想な子と見下しており、それに気付いてからは合コンに誘うことも男を紹介することも躊躇うようになりました。
20代後半は結婚適齢期、そのため彼氏が出来ないＡ子は落ち込んで暗くなっていないか心配をしていたのですが、街で見かけた彼女はすこぶる元気、当初は彼氏が出来なく気が可怪しくなりハイテンションになっているのかと心配をしたのですが、彼女は優しそうな男性と手を繋いでいたため驚きました。
前方からＡ子と男性が歩いて来たため、私は見ないように目を逸らしたのですが、私に気付いた彼女が「元気？久しぶり」、私は「元気だよ、Ａ子も元気にしていたの？」
彼女、「すっごい元気、そうそう、今、この人と付き合っているの」
Ａ子と手を繋いでいた男性は彼女より見た目が年上、それでも彼女が幸せなら幼馴染みの私がどうのこうの言う筋合いではなく、二人の中を邪魔してはいけないため、その男性にお辞儀だけして二人とは別れました。
その夜、家で寛いでいるとＡ子から電話、普通なら彼氏の素性を聞くのでしょうが、私が気になったのはどこで彼と知り合ったのか。
オープンな性格の彼女は、隠さず正直に教えてくれたのですが、知りたくなかったことも彼女は私に話してくれました。
20代後半は結婚適齢期、その頃の彼女は彼氏が出来ないことに、友達から親からも心配されていたのですが、最も気にしていたのは本人、自分のことでこれ以上周囲に心配を掛けたくないと思った彼女は、思い切って出会い系サイトに登録。
彼女が臆病な性格であることを私は知っていたため、トラブルに巻き込まれることも危惧されている出会い系サイトを利用するに至った彼女を不憫に思ったのですが、彼女が利用したのは偽名でも利用可能なサイトであったため、昔から妄想癖がある彼女にとっては、なりすまして利用することは容易いことでした。
出会い系サイトの目的は異性に出会うこと、いずれ会うことを考慮した彼女は、サイトのプロフィールにビジュアルに難アリと記載、それでも構わないとメッセージをくれたのが数名、その数名とはメッセージのやり取りを行い、その中で最も優しいと感じたのが、私が街で見掛けた彼でした。
私はＡ子に、「知らない人と会うのは怖くなかった」と聞くと
彼女、「合コンでも最初は知らない人でしょ」
私達はネット社会で育ちましたが、出会い系サイトでの出会いに偏見があり、Ａ子の彼氏のことも当初は快く思えなかったのですが、Ａ子と会いその男性とのやり取りを見せてもらうと、普通の恋愛と何ら変わらず。
出会う形はどうであれ、幼馴染みとしては、その男性が本気かどうかを見定めなくてはならないため、Ａ子には仲間の前にその彼氏を連れて来てもらいました。
仲間の前に来るのは覚悟があってのこと、仕事を尋ねると社員証を見せられ、後日確認をすると正社員雇用されているのは事実、私達は他にも根掘り葉掘り質問攻めしたのですが、Ａ子が好きになるだけあり、その男性は終始笑顔で対応。
仲間達は二人が付き合うことに賛成、そのことをＡ子に知らせると彼女は「彼と結婚をするかは分からない」、予想だにしない返答に私は驚き、「どうして彼と結婚をしないの？」と聞くと
彼女、「他にも良い人がいるかもしれないでしょ」
Ａ子は彼と出会ってからも、出会い系サイトの利用を続けており、仲間としては彼に申し訳ない気持ちになりました。
中居 賢匠
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